国の重要伝統的建造物群保存地区として知られる奈良県橿原(かしはら)市今井町。500棟もの伝統的建造物が軒を連ねる町のなかに、今回紹介する『em.sky 笑夢空』(エムスカイ)はあります。
実は、2019年5月17日のオープン前日にも筆者は偶然こちらにお邪魔していて、店主の寺田栄子さんとはそれ以来の再会。開店して2ヶ月半、現在の心境をおうかがいしてきました。
「ない、ことが在る」今井町
新緑萌える時期。今井町を散策していた時ガラス越しに見えた古いミシンに目が留まり、じっと眺めていると戸を開けてくれたのが、中でオープンの準備をしていた寺田さんでした。
今井町に来る前は大阪市内にお住まいだった寺田さん。その頃からお店ができたらいいなと、骨董市や業者さんをまわって古道具や雑貨を買い集めていたそうです。
大阪の市内は何でもあるし便利だけれど、そうじゃないところに価値を見出だし始めた寺田さん。故郷の橿原市に今井町という場所があることを思い出します。
一家で今井町へ移住。仮住まいしながらの改修工事
不動産屋には目ぼしい情報がほとんどなく、とても苦労されたとのこと。そんなとき、あるミュージシャンの方が今井町でライブを開催する情報を耳にします。その時の会場が現在のお店のちょうど向かい側。
物件を取り扱っている整備事務所・NPO法人とつながりを持つことができ、夢だったオープンが現実味を帯びてきました。
しかし、物件が決まってからも問題は山積みでした。一家で今井町に引っ越し、仮住まいしながらの町家の改修工事。国の補助金を受けたり、自分で柱を塗装したり、また友人・知人を募ってワークショップがてら漆喰を塗ったり。
知恵を絞り、まわりの助けを借り、em.sky 笑夢空はオープンします。店名の由来は寺田さんとご家族の頭文字のイニシャルから。たくさんの人の笑顔と夢と希望(空)が詰まったお店なんです。
自分が好きなものを好きになってもらえる楽しみ
「もちろんお店をやりたいという気持ちもあったんですが、かわいらしい雑貨や古道具が好きで集めていたので商品として販売することに対して、最初は躊躇いもありました(笑)」
一つひとつに思い入れがあり愛おしいものばかり。それが人の手に渡るとなると葛藤は付きものですよね。しかしオープンから時間が経ち、最近は自分が好きで仕入れたものを、好きになってくれて、買ってもらえる喜びがあることに気付いたと寺田さんは言います。
売れてしまう寂しさも在るけれど、それ以上に自分のセンスを褒められた、理解してもらえた気分になれる。販売にはそんな楽しみもあるんですね。
今井町の今後
今井町は映画のロケ地として使われることも多く、お話をおうかがいしている最中も機材を担いでロケハンしている方を見かけました。
映画やテレビの力は絶大のようで、衛星放送で今井町が紹介された時も三重県や北海道からお客さんがいらっしゃったそうです。
「ただ、ツアーを組まれるような観光地になってしまうと、それはそれで大変そうですけどね」
国内外から人が大勢来るようになると、のんびりゆっくりした町の良さも失われてしまうのではと寺田さんは懸念します。日常を忘れられる空間で、時間に追われることなくお茶を飲んだり、雑貨を選んだり、お話に花を咲かせたり。
何気ないことのように思えても、それが今井町ならではのおもてなしの形なのかも知れませんね。
自分の足音が聞こえる静けさ
今井町へは駅から徒歩で15分ほど。大阪や京都へのアクセスも良好な立地でありながら、一度足を踏み入れると、聞こえるのは他でもない自分の足音と小鳥のさえずり。
同じような建物に見えても目を凝らしてみると、瓦の形、格子の素材、擦りガラスの柄にも個性があります。通りに黒板が出ている家を見かけたら、中をのぞいてみてください。
窓から年代物のミシンが見えたらそこが寺田さんのお店「em.sky 笑夢空」です。お店はイベントやワークショップのスペースとしても貸し出しています。町家を使った催しをしたいという方も是非。
住所:奈良県橿原市今井町4-5-15 定休日:不定休 営業時間:11:00〜17:00 Instagram:https://instagram.com/_._em.sky_._?igshid=1dnayvy1r7ta6
投稿者プロフィール
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