新型コロナウイルス感染症の流行が広がる中、政府や自治体による補助金・給付金・助成金などさまざまな支援制度が実施されています。

感染の拡大防止のために従業員を休ませた場合の支援制度が、雇用調整助成金です。複雑な制度であるため、よく分からないという事業主の方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、社会保険労務士(社労士)の熊谷奈緒子先生に、「雇用調整助成金の新型コロナウイルス感染症に伴う特例」についてお話をしていただきました。

新型コロナに対する雇用調整助成金とは

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雇用調整助成金とは 、景気の変動など事業主の力が及ばないことが原因で事業を縮小しなければならなくなった時に、労働者の失業を防ぐために事業主に対して給付する助成金です。

本来であれば解雇しなければならないような状況で休業や教育訓練により雇用の維持をした場合に、休業手当の一部を助成します。

雇用調整助成金はもともとある制度です。これまでもリーマンショックや東日本大震災などの影響で、多くの事業主が助成金を受けています。

今回は、新型コロナウイルス感染症の影響で雇用調整助成金の特例措置が取られています。4月には、全国的に緊急事態宣言が適用されたこともあり4月1日から6月31日までを緊急対応期間として、特例措置の内容が拡充されました。

さらに6月12日に成立した第二次補正予算 により、緊急対応期間は9月30日まで延長となっています。

今回は、2020年6月22日時点で分かっている雇用調整助成金の内容についてお伝えします。

雇用調整助成金をもらえる要件

細かな要件はありますが、以下が当てはまっているかを確認してください。

  • 雇用保険適用事業所であること
  • 新型コロナウイルス感染症の影響を受け、前年の同月比で売上が5%以上減少
  • 4月8日から9月30日までの間に1日でも休業
  • 所定労働日の全日にわたる休業、または1時間以上の短時間休業をしたこと
  • 平均賃金の60%以上の休業手当を支払っていること

通常の雇用調整助成金は雇用保険被保険者のみが対象です。しかし今回の特例では、学生アルバイトなど雇用保険に入っていない従業員も対象となります。

また、部署や部門、職種、担当、シフトなどにより行われる1時間以上の休業であれば対象となることもポイントです。通常は会社一斉でなければなりませんが、特例扱いとなっています。

感染拡大防止のために、短縮営業などをしていた店舗などもあるでしょう。まる1日休業していなくても助成金の申請対象となりますので、当てはまるか確認してみましょう。

雇用調整助成金はいくらもらえるのか

助成額は、「支払った休業手当に相当する額 × 助成率」という計算式で算出します。

「支払った休業手当に相当する額」は、労働保険料または所得税が元になります。どちらを選ぶかは自由なので、有利な方法を選ぶと良いでしょう。

また、従業員がおおむね20人以下の会社や個人事業主は、「実際に支払った休業手当額」からの算出も可能です。厚生労働省が提供しているExcelの申請書に入力するだけで、助成金を計算してくれます。労働保険料や所得税から算出する方法も可能ですが、その場合はご自身で計算することとなります。

助成率は、中小企業で4/5、大企業で2/3です。解雇などを行わずに雇用を維持している事業主の場合は助成率が引き上げられ、中小企業で全額、大企業で3/4になりました。

例えば、中小企業が従業員に対し1日につき12,000円の休業手当を支給したとします。

・解雇などを行った中小企業は、12,000円×4/5=9,600円、
・解雇などを行っていない場合は、12,000円
が助成されます。

ただし、雇用調整助成金には1日1人あたりの上限額があります。通常は8,330円ですが、緊急対応期間中は15,000円に引き上げられました。

上限額と解雇などを行っていない中小企業の助成率は、6月12日に成立した第二次補正予算で変更になりました。それ以前に申請した分にも適用されます。追加分は労働局ハローワークが計算してくれるので、新しく申請手続きをする必要はありません。

申請に必要な書類

申請に必要な書類は、「小規模事業主(従業員がおおむね20人以下の会社・個人事業主)」と「小規模事業主以外」で異なります。

小規模事業主小規模事業主以外
支給申請書類(3種類)支給申請書類(5種類)
比較した月の売上などが分かる書類比較した月の売上などが分かる書類
休業させた日や時間がわかる書類休業させた日や時間がわかる書類
休業手当や賃金の額がわかる書類休業手当や賃金の額がわかる書類
役員名簿(役員などがいる場合)休業協定書
通帳またはキャッシュカードのコピー
(無くても可)
組合員名簿または労働者代表選任書
(条件によっては無くても可)
 事業所の従業員数や資本額がわかる書類

小規模事業主:雇用調整助成金支給申請マニュアル|厚生労働省
小規模事業主以外:雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)|厚生労働省

雇用調整助成金の申請・給付はすでに始まっている?

雇用調整助成金の申請受付はすでに始まっており、2020年6月18日時点で約12万件の支給が決定しています

申請手続きまでの流れは、労使協定(書面)→休業の実施・休業手当の支給→支給申請→労働局により審査→支給可否の決定→振込となります。

申請は、事業所の住所がある労働局またはハローワークに、窓口・郵送・オンラインのいずれかの方法で提出します。オンライン受付は不具合により停止していることもありますので注意してください。ご自身での申請に自信がない方は、社労士に申請代行を依頼するという手もあります。

申請書の様式は、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。

雇用調整助成金の様式ダウンロード(新型コロナウイルス感染症対策特例措置用)|厚生労働省
雇用調整助成金等オンライン受付システム|厚生労働省

雇用調整助成金の通常の申請期限は、支給対象期間の末日の翌日から2か月以内です。ただし、支給対象期間の初日が2020年年1月24日から5月31日までの休業の場合、申請期限は2020年8月31日までと緩和されています。

政府は、助成金申請の手続きを簡素にしてできるだけ早く支払うとしています。書類に不備がなければ、かかる時間は決定まで2週間程度、振込まで1週間程度です。不備がある場合は、やり取りを含めて数ヵ月かかってしまうこともあるので注意しましょう。

書類の作成・保管は重要です!

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今回の特例措置では、事業主へ迅速に助成金を届けるため、申請書類の簡素化や添付書類の省略が行われています。ただ、誤解してはいけないのは、あくまでも添付することが省略されただけで、作成・保管義務がないわけではないという点です。

申請時の提出書類は5年間保管しなければなりません。雇用調整助成金は、原則として申請した事業所に後日立入検査が入ります。

特例措置により申請時に添付が不要となった書類についても、後日の立入検査の時に提出を求められることがありますので、以下の書類についてはしっかりと作成・保管しておきましょう。

  • 申請書に記載した支給率の根拠となる休業協定書
  • 労働者名簿
  • 賃金台帳
  • 労働時間の記録に関する書類(タイムカードや出勤簿など)
  • 労働条件明示書や雇用契約書

実は、事業所として本来作成しておかなければならない必要書類がそろっていないため雇用調整助成金を申請したいけれどできない、という事業者様も少なくありません。

仮に今回申請できなかったとしても、将来のために今日からでもしっかりとした労務管理をされることを、強くおすすめします。

賃金台帳・タイムカード・雇用契約書や労働条件明示書などを備え付けていない事業者の方は、これを機にぜひ整備してください。有事の際に、フットワーク軽く支援を受けられるようになります。

労務管理に不安のある方は、お近くの社労士に相談するのも良いでしょう。しっかりとした労務管理は、事業者様、従業員双方を守る手助けになります。

参考:厚生労働省「雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)」

熊谷年金労務相談事務所 熊谷奈緒子 社会保険労務士
北海道津別町で、気軽にかけ込み安心して相談できる保健室のような社会保険労務士事務所を運営。労務相談・各種手続きの申請代行のほか、道東オホーツク障害年金サポートセンターを運営し、積極的に障害年金について啓蒙中。

熊谷年金労務相談事務所 公式サイト:https://nkumagai-sr.com/
道東オホーツク障害年金サポートセンター Facebook:https://www.facebook.com/doutou.okhotsk.syogainenkin

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投稿者プロフィール

こなみじゅんライター
北海道在住ライター。いくつになっても3歳児の好奇心を手放せません。伝えたいことを伝えたい相手に届けるお手伝いをします。

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